奈良が舞台になってる話という事で読んでみました。
「奈良」と一言で言っても史跡とか寺院とか結構点在していて広いです。
市内をぐるっと回ればコト足りる京都と比べると1日で全部をちゃんと見て回るのは無理でしょう。
この話でも、数日滞在して明日香を中心にあちらこちらをウロウロしています。
そんな訳で、恩田陸-「まひるの月を追いかけて」。
消息を絶った異母兄を探すために、その恋人と一緒に奈良を訪れ過去に兄が辿った同じ道を歩いてみる事にしたワタシ。恋人から語られる、兄とその親友との奇妙な三角関係、私自身の過去もフラッシュバックする中で次々と明かされる嘘。そして、兄が本当に愛した人とは。。それよりも、隣で歩いているこの人は一体誰?・・・という感じです。
話の本質とはあまり関係無い所まで訪れる場所の説明が詳しく書かれていいたりする箇所もあるのですが、それでも何だか雲の中を旅するような独特の空気感があるのは、この作者さんの筆致なんでしょうか。その割に、舞台が奈良である必然性がイマイチ薄いような気もしますが、逆に『奈良自体の空気』がこの主人公達の心象とあっているという事で選ばれたのかもしれませんね。
主人公の「自分の人生の主役が自分では無いみたい」なセリフが印象的でしたが、傍観していたはずの舞台に無理矢理上げられた主人公が、最後に告げられた真実をどう受け止めるのか、それともやはり傍観者のままで居続けるのか、語られないままで終ってしまうのが少し残念。『敢えて書かない』という事も余韻を引くためのテクニックなのでしょうけど、管理人の個人的趣味としてはあまり好きでは無いですね。
「確かにそこにあるのにぼんやりと輪郭が捉えられない」モノとして「真昼の月」であり、えてして「真実」や「自分自身の事」なども見えていそうで見えていない、そんな話なのですけど、話がソコまでで、解決に至っていないため、どっちかというと『ファンタジー』系のお話として読んだ方がいいのかもしれません。
それにしても、よく山の辺の道を端から端まで歩くなぁ・・・まぁ、7時間と書いてあるけど(^^;)。
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