本日も普通に出社でして特に書く事も無いので昨日読み終わった本でも。
本当は昨日書こうと思ったのですが、ジェラートがあったので今日に延期(笑)。
恩田陸 - 「夏の名残りの薔薇」
有力者の三姉妹が山奥のクラシック・ホテルで毎年秋に開催する豪華なパーティ。招待客は親族やビジネスパートナーなどの成功者ばかり。そして、雪で閉ざされた格調高いホテルで事件は起こった。果たして誰が死んで誰が死ななかったのか。そもそも「事件」自体が本当に起こったのだろうか。
各章は、それぞれ登場人物による一人称形式でリレーされ、章終わりには誰かが死ぬが、次の章が始まると、死んだはずの人物が何事も無かったかのようにシレっと登場する。誰かがどこかで嘘をついているのか、もしくはこの手のミステリーでありがちの「全員が嘘をついているパターン」なのかとも思うが、それぞれの殺人(?)に関連性が見えず、また一人称語りでは嘘をつく必然性が見当たらないのでなのでそうでもなさそう。
実害が無いと思うので書いてしまうと、どこまでが本当の事なのかは最後まで来ても明確には明かされておらず、amazonの書評などを読んでみても、ソコに不満がある人が多いようで、また、時々半ページほどの『去年、マリエンバートで』という実在の映画の脚本が挿入され、読みにくい事この上ないが、一応最後には物語的にはオチているので、これはこれでありではないかと思う。[まひるの月を追いかけて]のような「後はどうなったかあなたのご想像にお任せします」的な終り方よりも、こちらの方が数倍「終結」しているのではないか。
そもそも、真実を全て明白にする事自体はそれほど重要な事では無いと登場人物の口からも語られているし、現に物語の主眼は誰が死んだとか誰が殺したとかそんな唯物的なところには無い。ただ、この結末には必須条件とはいえ主人公の心変りを書ききれていないところは最大のウイークポイントかと思う。人の心とはそういうものだ、という事かもしれないが、もう少しランディングポイントまで助走が必要だったのではないだろうか。
どこまでが本当でどこまでが嘘なのか、どこまでが現実に起こった事でどこまでが幻だったのか、そういう事をあまり考えず、それこそ本当に山奥の豪華な山荘ででもこの本を片手に紅茶をくゆらせながら、そのリッチな世界に自分も泳いでいるかのような気持ちで、作者の用意した罠に敢えて落ちてみるのもいいかもしれない。ま、「優雅」というにはアチコチで結構ドロドロした人間関係が展開されるので、そういうグロテスクなモノに抵抗がある人にはお勧めできないが。
今日は何となく、読書感想文ブログっぽい文にしてみましたm(_ _)m トクニ イミナシ。
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