タマタマ手に入った宝くじが高額当選したら・・・そんな時、どうなってしまうでしょう。当選者は「その日から読む本」というのが貰えて、その本の中にはイロイロと含蓄のある言葉が書かれているそうですが・・・管理人の場合、隠すなんて事が出来ずに喋ってしまって、自滅してしまう自信があります(笑)。
あなたに知っておいてほしいのは、人間にとって秘密を守るのはむずかしいということです。たとえひとりでも、あなたがだれかに当せんしたことを話したのなら、そこから少しずつうわさが広まっていくのは避けられないと考えたほうがよいでしょう。不倫相手と逃避行の後、宝くじが高額当選、巻き込まれ、流され続ける女が出合う災厄と恐怖とは。
この本はジャンル分けがちょっと難しいですね。ミステリーっちゃあ、ミステリーでもあり、サスペンスホラーだといえばそうでもあり、ただの「語り」だといえばそうなんですが・・・。あまり書くとネタバレになってしまいますけど、物語は主人公の夫が自分の妻の体験談を微細漏らさず語るだけという構造に終始一貫しています。
こういう「一人称語り」って、思ってるのと違う人の事を話していたり、どこかで人が入れ替わっていたり、実は嘘をついてたり、そういうトリックのタネに使われる事も多いのですが、別にそういうのでもなく、本当に淡々と話すだけ。そしてちゃんとオチもあるという巧妙さです。
高額宝くじが当たってその日から豪遊三昧でアッという間に散財してしまい・・・という話でも無く、自分の意思とは関係無く手にしてしまった宝くじなので、その所有権を巡って愛憎渦巻くドロドロの奪い合いが始まって・・・という展開にもならず(ま、人は死ぬのですが)、途中から「一体この話はどこに向かっているのか」、この語っている「夫」とは誰なのか、はたまた何の目的があって語っているのか、第一、本人ではなくて「夫」が語らなければならないような訳が何かあるのか、と段々訳が分からなくなっていくうちに残りページが尽きてしまい・・・。
ネットで感想とか読んでいますと「こんな女の人はおらんやろからストーリーにリアリティが無い」みたいな事を書いてる人がいましたが、それは多分逆で、こういう展開になっていくためにあのように主人公の性格付けを行った、と見るのが正しいのでしょう。また、「あの人はどのタイミングでその事を知ったんだ」、等々の疑問点も、一人称語りであるがために語らなくて済む、という読者にとっては多少不親切な点が一応正当化できているところも良く出来ていると思いました。主人公が知らない事は「語れない」訳ですから。
あと、以下の理屈には「なるほど」と思ってしまいました。
はからずも人を殺めてしまったとき、とかく凡庸な人間は死体を土に埋めたがります。私を含めた大多数の凡庸な人間という意味です。過去にテレビや新聞で、どれだけ埋まった死体が掘り起こされるニュースを見聞きしたかもしれないのに、それでもなお今日、犯罪者は死体を埋める事をやめません。埋めるのは自分が殺したからだと語っているようなものなのに。
無駄に余計な事をしてしまって文字通り墓穴を掘るという事はよくあります。人を殺してわざわざ埋めに行くというのは、コントなどで「と、隣の部屋には誰も隠れていません!」とかやってしまうのと結果的には同じなのでしょうか。まぁ、「なるほど」などと思っても、今のところ人を殺める予定が無いので、その教訓を活かす機会は無いと思うのですけどね(笑)。
コメントする