ニュースを見ていて、何が一番いたましいって、やっぱり児童虐待でしょうか。にわかには信じられないような事件が後を絶ちませんが、未然に防止する事もなかなか難しいという現状があるようなのが残念なところです。最近、イジメのニュースも毎日見かけますが、血の繋がった親子でさえも暴力の対象になりえるのに「我が校にはイジメはありません」とかヌケヌケとヌかす校長などを見ていると、そんな脳ミソお花畑なセンセに子供を預かる力量があるのんか、と思ってしまいます。
話が逸れましたが。
「ある少女にまつわる殺人の告白」 - 佐藤青南
「亜紀ちゃんの話を、聞かせてください」長崎県南児童相談所の元所長らが語る、ある少女をめぐる忌まわしい事件。10年前にいったい何が起きたのか。元所長、医師、教師、祖母……様々な証言が当時の状況を明らかにしていく。
『このミステリーがすごい!』の優秀賞を取った作品だとの事なので、頭から「ミステリーだ」と構えて読んでしまうと話の内容に真っ直ぐ入って行けないので、ソレはまず横に置いていて読んだ方がいいかと思います。読み始めの方で無駄な伏線探しをしてしまいましたよ。
おぞましい女子同士のイジメやら、児童福祉の現状の問題やら、家庭内暴力やら、続々とインタビュー形式で語られて、心が痛くなりますが、女の子を親戚の家に逃がそうとする辺りから段々と行きつく先が見えて来て「こんな事にはならないように」と願うも虚しく、負の連鎖はクルクルと回り続けてしまいます。
独白形式という事で、湊かなえの「告白」をどうしても彷彿とさせてしまいますが、それ以前からもこの手の書き方はあった訳で、それだけをもってして「よろしくない」という判定を下すのはいかがなものかと思います。時間軸が真っ直ぐ縦には並んでいなかったり、直接関係のない人が登場したりなどの工夫もありますしね。
ミステリー部分に関しては、10年前に誰が死んだのかと、このインタビューを誰が執って回っているのかというところになるのですが、後者はラストのオチとともに途中で分かってしまうのですけど、前者は「あ、なるほど」と思わせる展開でした。残念ながら辿り着くまでに勿体ぶり過ぎの感はちょっとだけありますけれど。
こういう事件が起こってしまうと、いつも「周りが気付いてあげれば」とか「もう少し注意を払っていれば」などの言葉で語られる事が多いと思うのですけど、それでも全てを監視して救い上げるという事は、児童相談所の元所長も語っている通り、現実的には難しいと思います。なので子供の側からSOSを発しやすい環境にしていく必要がありますが、作中でも子供が諦める描写が何度も出て来る様に、大人の世界は大人の世界で似たような縮図になっているので難儀なトコロです。
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