一応、ミステリーというのはネタを明かしちゃうのはタブーだと思うのですが、正直あまりにアレなので、別にどうでもいいでしょう、と思えてしまう作品に当たりました。ツッコミどころが多過ぎて、書き切れませんのでかいつまんで紹介します。そもそもコレをミステリーと呼んでいいモノなのかどうかも(^_^;)。
「トリック・シアター」 - 遠藤 武文
空前の劇場型犯罪が幕を開ける。2010年3月21日未明、奈良と東京で、女性と男性が殺害された。被疑者は被害女性の夫であり、被害男性の大学時代のサークルの先輩だった。同一人物による500km離れた場所での同時殺人。警察庁「裏店」のキャリア警視正・我孫子弘が捜査の指揮をとると、被疑者の大学時代の映画サークルの仲間4人がこれまで、3月21日に事故・もしくは自殺で死亡していたことが明らかになる。
舞台が「奈良と東京」となれば読まざるを得ないでしょう。管理人もいつ人を殺めてしまうか分からないので、その時のアリバイ作りの参考なるかもしれませんし(笑)。しかし、物理的に500km離れた場所での犯行など無理な事は分かっているのですが、それでもそれぞれで起訴しようとする警察の無能っぷりがスゴイですね。ココまで馬鹿にされたら本物の科学捜査班もキレると思います。ちょっと真面目に検査すりゃ分かるやろと。事情聴取中に重要な個人名をスカッと聞き流してたりもしてますし。
また、足かけ7年にも及ぶ不連続不審死によるメッセージが、あまりに間が空き過ぎる上に分かりづらくて全然気付いてもらえないという無駄骨に終わってみたり、密室(?)殺人の入れ替わりは普通気付くと思うのですが、じゃあ真犯人はどうやって逃げたのよ、という段になって、「トイレにでも隠れてたんだろ」で済まされた日には度肝を抜かされてしまいました。日々トリック創造に頭を悩ませる、世界1,000万人(適当な数字)のミステリー作家を真っ向から否定するこの超絶推理にはご同慶にたえません(-_-;)。
しかも最終盤になって物語上最重要な人物が現れて、あれ?こんな人って今まで出て来てたっけ、と思って最初から読み返すもやはり出てきておらず、その割には物語中では当たり前に扱われているので変だなと思ってちょっと検索してみたところ、どうやら作者のデビュー作に出て来る人物のようでした。明らかな続編でも何でも無いのに、こんな登場のさせ方があるかっちゅう話です。
などなど、内容もアレなんですが、登場人物が途中から何人もほったらかしにされるわ、警視正の奇行が何かのネタフリなのかと思ったらこれまたほったらかしにされるわ、飲み屋でクサヤだのモツ煮をやたらと勧めたりビ-ルの銘柄が何種類も出て来るのが(以下同文)、途中に何度も何度も挟まれる織田信長のエピソードが(以下同文)、と、「細かいトコロにこだわる」という意味をはき違えた無駄な文章が多いのも気になります。
まだまだツッコミ所は快挙にいとまが無いのですが、ココまで挙げた事柄なんてどうでもよくなるような驚天動地の真犯人が遂に明らかに!!・・・いや、コレって、編集の人もNG出さなかったんですかね。可能性が無いとは言いませんけど、数百人単位の死者を出したテロや、100人規模の冤罪を生んだ事件の真相がコレでは・・・今時ハリウッドの三流作家でもこんな思い切ったシナリオ書きませんで(-_-;)。